老舗企業の誇りとは

日付
2019/12/10
カテゴリ
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 「経営とはいかに環境の変化に適応するかということ──。」

 経営者にとっては当然のことかもしれませんが、
 頭ではわかっていても、実践できているか?と問われると
 「実践できていない……。」と
 感じる方も多いのではないでしょうか?

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 以前、和菓子の製造販売をしている企業の社長から
 経営改善のご依頼をいただいたことがありました。
 創業100年を超えた、いわゆる老舗企業でした。

 まず、本店を訪問しました。
 店内はそれなりに清潔ではありましたが、
 店員の挨拶の声も小さく、全体的に暗い印象でした。

 バックヤードには、所狭しと在庫が置かれており、
 通路も確保できていない状況……。

 その在庫を横目にしながら入っていった奥の本社も、
 雰囲気は暗く、デスクまわりなども乱雑で
 まったく整理整頓ができていませんでした。

 決算書を見ると、4期連続営業赤字。
 財務状況も債務超過の寸前。
 ここまでの状況になった経緯を社長に尋ねると、こう答えました。
 
 「何とかしないといけないと思い、
  営業担当者と各店舗の店長には『売上を上げなさい』と
  激を飛ばしてはいました。
  しかし売上は維持するのが精一杯でした。」

 確かに売上は維持しているのですが、
 限界利益率や粗利率は毎期低下しており、
 売上維持のため薄利多売に走っていることは明らかでした。

 「外部の支援を受けたり、銀行にリスケを依頼したりも
  できたのではないでしょうか……?」と問いかけると、

 「いろいろ変えないといけないとは思っていたのですが、
  老舗の誇りというか、意地というか……。
  業界の中ではそれなりに名も知られているので、
  外部を頼りにすることはできませんでした。」
 とのことでした。

 次に、工場内を見せていただきました。

 建屋は老朽化が激しく、
 生産設備は30年物も珍しくないほど古く、
 原材料や製品が通るすぐ側のラインには
 粉や埃が堆積している設備もありました。

 「正直、ここで作られている物は食べたくないなぁ……。」と
 思うほどでした。

 社長は
 「自分は営業専門で工場内のことは工場長に任せていた。」と
 おっしゃるので、工場長にこの状況について意見を求めてみました。

 「わかってはいるのですが、
  忙しくてなかなか手がまわっていない。
  ほかの社員も同じで、
  わかっていても積極的に行動する社員はいません。
  評価の仕組みもなく、
  頑張っても頑張らなくても何も変わらないので、
  頑張るだけ損をするという雰囲気があるんです。」

 続いて、一番売れ筋の商品を試食させていただくと、
 そのおいしさに驚きました。

 そこで、この商品でいくらの利益を得ているのか尋ねると
 「実はハッキリとわからないんです。
  原価計算がちゃんとできていないので。」
 とのことでした。

 現場視察を終えて、私は真正面から申し上げました。

 「この平成(当時)の世の中で、
  これほど時代に取り残されている会社は
  見たことがありません。」

 「これまでは、老舗の看板と商品だけで
  経営できたのかもしれませんが、
  今の状況は放漫経営と言わざるを得ません。」

 「老舗の誇りを語る前に、
  まずは生産設備の埃をなんとかしましょう。」

 この言葉を聞いた社長は顔色を変え、
 今後は真剣に経営改革に取り組むことを約束してくださいました。

 その後、徹底的な工場内の5S活動に始まり、
 原価計算の仕組みや人事評価制度の構築など、
 さまざまな改善を行った結果、
 支援1年目から黒字化に成功しました。

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 この企業は老舗企業でしたが、
 環境の変化に適応せずに過去の延長線上で経営していました。

 「老舗とは老舗らしからずして老舗なり。」

 常に変化と挑戦を続ける姿勢が、
 企業の礎となり、
 本物の老舗企業の誇りとなるのではないでしょうか。

 もし今回の事例を読まれて
 「自社にも当てはまる点がある」と感じた方は、
 経営改革への第一歩を踏み出すことをおすすめいたします。

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