トップダウンから
ボトムアップ型の経営へ
組織図をひっくり返す大転換

業種
旅館,ホテル業
従業員数
51名(PA含・取材当時)
売上
4.2億円(取材当時)

会社概要

会社名 紋別プリンスホテル株式会社
代表者名 代表取締役社長 林孝浩 様
所在地 〒094-0004 北海道紋別市本町7丁目3-26
事業内容 ホテル業
創業 1989年
資本金 3,000万円

ワントップの「文鎮型組織」で中間管理職が育たず
指示待ち社員ばかりに……

文鎮型組織

流氷の街、北海道紋別を代表する老舗ホテルである「紋別プリンスホテル」。同社を率いる代表取締役 林孝浩氏は、1989年の開業と同時に25歳で支配人に就任すると、接客業に不慣れな父(創業者・先代社長)に代わって現場の指揮を執り、創業社長さながらに奮闘。2007年に先代からバトンを引き継ぎ代表取締役に就任した後も、現場を熟知する林社長は常に先頭に立ち、強力なリーダーシップで会社を引っ張ってきた。

その経営スタイルは典型的なトップダウン。会社は着実に成長を遂げた。しかし、ワントップの「文鎮型組織」には、将来を担って立つ中間管理職が育たない。カリスマ社長のもと、皆が社長からの指示待ちになってしまっていた。少しずつ積み重なった小さな「ひずみ」をそのまま放置していれば、あと数年のうちに大きな亀裂が生じていたかもしれない。そんな中、突然のコロナ禍に見舞われる。インバウンド需要がなくなり宿泊予約のキャンセルが相次いだ。林社長はピンチをチャンスに変えるべく、ご子息・後継者である専務と支配人の3人で『実践社長塾®』を受講。そして、林社長が将来構想として描いていた、専務を中心とした組織作りのための改革の第一歩を踏み出した。

社員一人ひとりが自ら考え行動する
「ボトムアップ型組織」への変化を実感

ボトムアップ型組織

《林社長》「初めのうちは取り組みにあまり積極的でなかった社員もいましたが、明らかな変化を実感しています。また部署を超えた仲間意識も生まれてきているように感じています。」

林社長が描いていた将来構想を実現するためには、ワントップ(文鎮型)組織から各部署が自立して柔軟に課題に対峙できる「ボトムアップ型組織」に移行しなければならなかった。そこで新たな組織形態に移行するための課題や問題点を細かく洗い出し、改善に向けた取り組みを開始した。

特に注力したのが委員会活動である。部署をまたいだ横軸の構成で、1つの部署では成し得ないさまざまなジャンルの課題に取り組む。各委員会は事業を立案し、事業計画書を作成。それを幹部会議に提出して、幹部会議における協議・審査の上、承認を受ければ実行、否認されれば委員会に持ち帰り計画を練り直す。活動後は、報告書を作成。再度、幹部会議の審査を受け、承認されれば事業終了となる。

原則として、経営陣は委員会活動に直接参加せず、オブザーバー的な役割にまわる。その結果、社員の間から改善に向けての意見や提案が自然と出るようになった。さらに、委員長がブレインを務め、各委員の活動を適切に管理するなど委員会を牽引しなければならないため、若手社員にとってリーダーシップ能力を身につける絶好の機会となった。

『ありがとう』が行き交う素敵な会社にしていきたい

林社長他2名

《林社長》「今年の経営計画発表会で”人を大事にするということを考え直さなければいけない”と話しました。今はもう自分の背中を見せて、部下を育成する時代ではありません。
叱られて育ってきた私たちの年代でも、褒められたほうががんばろうという気持ちになるのは当然でしょう。褒めて育てるほうがよほど伸びます。部下が自分の隣にいるのはありがたいこと、彼らが何かしてくれたことに対しても『ありがとう』と常に感謝の気持ちを持ち、お互いに相手をリスペクトし合うことでよりいい人間関係が構築できます。
これから入社する人たちにも『本当に来てくれてありがとう』と常に感謝の気持ちを持ち、みんなで迎えたいと思います。」

アフターコロナの時代に向けて、旅行需要は徐々に回復傾向。ホテル業界にも、光明が見え始めている。いよいよ反転攻勢をかけるにも、人手不足は大きな壁となって立ちはだかる。Z世代の若手人材を取り込むためには、社員一人ひとりの意識改革と風通しのいい組織風土の醸成が不可欠だ。今後も、さらなる改善の取り組みは続いていく。

詳しく知りたい方は

nbcplus vol.108号

紋別プリンスホテル株式会社様の改善の軌跡・取り組みの全貌は

『NBCPlus』108号でもご紹介しています。ぜひご覧ください。